【Uターン女子インタビュー】纐纈恵さん ~フルサトで大好きなガーデニングを満喫。家族と一緒にまあるく暮らす~

Uターンのカタチ① 纐纈恵さん

~田舎で大好きなガーデニングをを思いっきり満喫。

お庭から裏山へとつながる、森のオープンガーデンに~

 

「夫婦が選んだカタチ。奥さんのフルサトで家族とまあるく暮らす。」

纐纈(こうけつ)恵(めぐみ)さん 洋貴(ひろき)さん

 

profile

飯地町ご出身の恵さん。2018年秋に、恵さんのご実家近くの開拓した土地に家を建て、旦那様の洋貴さんと共に、夫妻で飯地町へUターン。

洋貴さんは、恵那市長島町のご出身。お二人とも、恵那市内の同じ印刷会社にお勤め。

恵さん夫妻の住まいは、ご実家から山道を通りぬけた、隣の山の敷地内にある。

ご実家には、恵さんのご両親と祖父母の4人がお住まい。(当日お父様はご不在)

ご自宅、ご実家共に、広大なお庭が広がり、手入れが行き届いたお庭には、たくさんの花木や花が植えられ、季節ごとに目を楽しませてくれる。

恵さんの夢は、裏山も散策できるようなお庭と森のオープンガーデンを開くこと。

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-家を建てる場所を “飯地” に決めた理由は、

慣れ親しんだフルサトの良さを改めて実感したこと。

そして、今後の暮らしを想像し、“最善” を選んだこと。

 

自然豊かな飯地町で生まれ育った恵さん。

地元の印刷会社に就職後、ご主人の洋貴さんと出会い、結婚。

暮らしはじめた最初の場所は、お二人の仕事場からほど近い、市内のアパートだった。

 

「ガーデニングが好きなので、庭付きのアパートを選んでお花を育てたりしていました。

けれど、当然ですけど自分たちのプライベート空間ではないので、お庭でお隣さんと出会ったり

人の気配も気になってしまって。」

幼いころから、広々とした実家のお庭で過ごした恵さんにとって、アパートの限られたお庭では物足りなかった。

 

しばらくアパートで暮らした後、家を建てる話になった。

恵さんは、一人っ子だったので昔から

“いつか実家を継ぐんだね。”

と周りの人からいわれていたこともあり、実家の近くに住むという想いはずっと頭の中にあった。

 

しかし、この時点で必ずしも飯地に住むとは考えていなかったので、町外の土地を紹介してもらい、見学に行っていた。

気に入る場所もあったが、土地の状態などが気にかかり、決めかねていた。

 

そんな中、ご実家に帰った際に、恵さんがお父様へ話した問いかけから、話が新たな方向へ進んでいく。

 

「父親にふとしたタイミングで、“私たちに飯地に住んでほしいなら、ちゃんといわないと飯地からでていっちゃうよ”と言いました。

そしたら父親のスイッチが入ったみたいで(笑)。夫に飯地に住んだらどうかという話をしてくれました。」

 

飯地へ上る道。朝靄に霞む紅葉と木漏れ日が美しい。(洋貴さん撮影)

 

ご主人の洋貴さんも当時の想いをふりかえる。

 

「市内でも気になる場所がありました。でも当然ですが土地の購入代金がかかります。

その時に義父から“うちの土地を使ってもいいよ”といってもらえたのがありがたく

総合的に考えて、妻の実家に家を建てることに決めました。

小学校の子どもが少人数というのも気にはなりましたが、マンツーマンに近い形で教わることができるのはいいし

他に友だちを作る環境を与えることもできる時代なので。」

 

色々な選択肢を探ってきた恵さん夫妻だったが、両親などの気持ちを聞いたうえで

自分たちのこれからの暮らしを想像し、田舎暮らしの “メリットデメリット” を真面目に考え、

飯地に住むことを選んだ。

 

恵さん夫妻のご自宅前で。壁面にはツルバラが咲き誇る。

 

「恵さん夫妻の暮らし」

 

―暮らしてみてわかる動物と出会えたり、自然を身近に感じられること。

自宅の窓からみえる開拓した裏山。ここにカモシカが悠々と現れる。

 

「僕が暮らしてみて良かったと思うことは、常に季節を感じられることです。

そして、日常生活の中で普通に動物と出会えること。

冬場はリスが裏山をチョロチョロしたり、窓際から外を眺めていると色々な鳥がきます。

中でも驚いたのは特別天然記念物であるカモシカが普通に庭を歩いていることです。

しかも当たり前に日常的に。ここでしか見ることが出来ない光景をみられるのがよいです。」

 

元々、動物が好きだという洋貴さんにとって、普段から動物に出会える暮らしは、思いがけないサプライズだったようだ。

洋貴さんは、まだ恵さんも見たことがないフクロウを、山道の途中のフェンスにとまっているのをみたそうだ。

また、夜中にムササビが飛んだのを目撃したり、実家のトイレを洋貴さんに貸したらコウモリがいるのを発見したらしい。

 

「夫は動物を引き寄せる人なんです。」と恵さんは笑って話す。

 

 

-これぞ田舎だから愉しめる!趣味の時間。

 

恵さんが育てた八重咲のバラ「レオナルド・ダ・ヴィンチ」

 

「私は最近、手作り化粧水にはまっています。

材料は、庭に生えている野草や、育てたラベンダー、カモミール、バラの花びらなどです。

野草は実家の石垣に生えている、ドクダミやユキノシタを使います。なので、材料はタダです。

春になったら、よもぎエキスも作ろうと思っています。

野草などを乾燥させたものを手作りキットのようにして販売したり、入浴剤も作れたらいいな。」

宝が自然に庭に転がっている。

 

「これこそ田舎暮らしの醍醐味」と恵さん。

 

夫妻で話していると、野草など、飯地に自然にあるような地域資源を活かしていく

小商い的なアイデアも浮かんでくるようだ。

 

恵さんお手製の化粧水。自身のお庭から摘んだ野草ブレンド。材料はすべてお庭から調達。

 

夕暮れ時の焚火。火のゆらぎをみていると、時が経つのを忘れる。

 

「僕は、よく外で作業をしながら焚火をします。特に何の目的もなく火を起こして、眺めるのがいいですね。

カメラも趣味で、星空の写真を撮りますが、星がいつも綺麗に見るので、撮影に苦労しません。

あと、最近では、新しい趣味で以前から憧れていたサックスを始めました。

夜が更けてから練習をはじめても、音を気にせずに練習できるのは本当にいいです。」

 

ホームステイ時間がふえたことがきっかけで始めたというサックス。

街中や住宅地だとわざわざ防音設備にしないといけないところもあるから

自由に吹けるのは最高だと洋貴さんは話す。

 

星空の写真を撮るのも洋貴さんの趣味。

 

-生活の質を高める。薪ストーブのある暮らし。

 

そして、もうひとつご夫妻でこだわったのは薪ストーブだ。

 

せっかく薪になる木々が身近にあるので、自然と一体になった暮らしをしたいと取り入れた。

家の中心の吹き抜けのリビングに備え付けられた、薪ストーブは、一度焚くと冬場でも半袖で過ごせるほど温かい。

 

「カレーやビーフシチューなどを夫が、こだわって作ってくれるときがあって、それをストーブの上でコトコトと煮込んだり

焼き芋をしたり、ピザを焼いたり楽しんでいます。

薪ストーブの灰は、春先の山菜のあく抜き用に祖母がもらいにきます。」

と恵さんは、楽しそうに話す。

 

「都心だと煙を気にかけたり、煙のトラブルもあるようですが、その必要が全くないので

隣がない田舎にとって最高のアイテムです。」と洋貴さん。

 

薪ストーブの傍らで、趣味のサックスを楽しむ洋貴さん。

 

ただ、薪づくりはなかなか大変なようだ。

ストーブで薪を一晩焚いて過ごすのに太めに割った薪を5本以上は使うため消費は想像よりはるかに早い。

 

「本当はもっと薪棚をたくさん作って、薪を積みたいとは思っているのですけど、追いつかなくって。

さいわい、祖父が薪割り機をもっていて、手伝ってくれるので本当に助かっています。」と恵さん。

 

そんな薪づくりをお手伝いしてくれるは、恵さんの祖父母の美作さん、葉子さんだ。

お二人とも、お隣のご実家に住んでおりご健在だ。

 

「祖父母との暮らし。」

 

―夫妻を支えてくれる祖父母の存在

 

「私が、Uターンを考えた中で、おじいちゃんとおばあちゃんの存在もありました。私が町外に住むかもしれないよといったら、すごく悲しそうな顔をして。」と恵さん。

そして、恵さんたちが近くに住んでくれてる今、“とても心強い”とお二人の存在を喜んでくれているそうだ。

 

祖父母の美作さんと、葉子さんは、町内では有名な芸術に長けたお二人である。

 

玄関先に飾られる美作さんの書。

 

祖父の美作さんは、長年、子どもたちに習字を教えていた町の「習字の先生」である。

代々、美作さんに習ったという親子も多い。

町の記念碑や、小学校の校歌が書かれた版の書は美作さんが書いたものがたくさん残る。

 

 

 

そして、美作さんは80歳を過ぎた今でも、現役のヘボ採り名人でもある。

ヘボの佃煮などは季節になると家族が楽しみにしている秋の味覚のひとつだ。

 

実家の裏で、美作さんが飼っているヘボの巣箱。

 

そして、祖母の葉子さんは、毎年、菊鉢を40鉢も作り、品評会に出すほどの菊づくりの達人。

恵さんのお花で分からないことがあるときの相談役は、葉子さんだ。

 

「恵ちゃんたちと一緒にお庭づくりをしたり、春からは野菜作りや、お花を植えて、秋には菊の花を愛でて

それが終って寒くなってきたら、畑の仕事がなくなるから、家で大好きな手芸細工や手仕事をするのよ。

季節を通して、やることがあって毎日本当に楽しいよ。」

と葉子さん。

 

ガラスの瓶に刺繍した毬が入った不思議。器用な葉子さんの作品

 

そして、祖父の美作さんも

「おじいさんとおばあさんもいつかは動けんようになるけど

なるべく元気なうちに1年でも、2年でも元気でおって助けてやりたい。」

と語る。

 

お二人の言葉からお孫さん夫妻との暮らしを幸せに想い、

そして、夫妻のことを大切に思っていることが伝わってくる。

 

 

「祖父母には、助けられて生きています。いつもたくさん手伝ってもらってありがとうございます。

けどけっこう心配になるときありますよ。おじいちゃん、草刈りとかで、けっこう急斜面の上の方まで登っていくから。」

と祖父への感謝と、安全面のことを気にかける恵さん。

 

洋貴さんも、「飯地の人たちのしきたり、お祭りや、何を大事にしてきたか、何のことをやるのかさっぱりわからないとき、聞くことができるのでありがたい」と話す。

 

このように、暮らしの中で、恵さんたちが祖父母の美作さん、葉子さんから自然と譲り受けていることは大きい。

お二人から学ぶことはかけがえのない財産であり、また夫妻がお二人にもたらしているものも、とても温かいと感じた。

 

葉子さんが愛情をかけて育てた見事な菊の花

 

「家族みんなで楽しむ暮らし。」

 

-休日は、家族みんなで理想のお庭づくり。

 

そして、インタビューの中で一番印象的だったのは、家族みんなで過ごす時間だ。

 

そのひとつが、家族全員で行うお庭づくりだ。

 

天気の良い休日などは、恵さんのご両親と祖父母、そして恵さん夫妻の6人で

開拓した山の手入れをしたり、バラやクレマチスなどのツル植物が這うパーゴラを作ったりする。

お庭づくりの号令は祖父の美作さんがかけるそう。

 

恵さんのお庭の道沿いには、家族で植えた紫陽花や花桃が並んでいる。

苗木はカモシカが芽をかじらないように、美作さんと葉子さんが一つ一つ丁寧に、ネットで囲んでくれてある。

 

木漏れ日が紫陽花に優しく注ぐ。

 

「最近は、オリーブの苗を買ってきました。飯地の寒さでどれくらい育つかわからないですけど、まずは鉢植えで育てたいです。」と恵さん。

 

「庭づくりに、土地はいくらでもあります。

都会だったら、木を植えるのも大きさを考える必要がありますが、ここだと躊躇することもありません。

コナラやクヌギの木を植えたいと思います。あとは、やはり自分も山の間伐のことも思うし

その材木を使って何かをやれたらいいと思っています。木工もやりたい。」と洋貴さんも話す。

 

家族の協力のお庭づくりのもと、夫婦の夢も広がっていく。

 

季節ごとに色々なお花が植えられている。

 

―家族全員で山歩きをして、土地を確認すること。家や土地を継いでいくということ

 

そして、もうひとつ、家族全員で行ったことがある。

それは、家族全員で行った山歩きだ。

この山歩きは、祖父の美作さんが、持ち山の場所を家族に伝えるためものだった。

 

「皆が元気なうちに“山の境界をみておこう”と自分の家の山を家族全員で歩きました。

おじいちゃんは、すごい傾斜の所をどんどんと歩いていってしまって

よくこんな場所が歩けるなと感心しました。

そして、山の中には滝があって綺麗でした。」と恵さんが話す。

 

所有する山の中に流れている滝。

 

「お弁当をもって、家族6人で行って、まるで遠足みたいで楽しかったよ。」

と話してくれたのは葉子さん。

「舗装の上は体が疲れるけど、木の葉や土の上は、ふかふかだから、どれだけ歩いても大丈夫。だからおじいさんも長い距離を歩けたよ。」と笑う。

 

田舎の若者離れが進む中、新たにこの土地を引き継いでいく恵さん夫婦と

それを引き継いでいく家族みんなで、

まるで「遠足のように」楽しみながら場所を確認できるのは素晴らしいことである。

 

この日、纐纈家の全員が、先祖代々続く、持ち山の場所を確認した。

 

裏の山の前で。木々の間に日が射し込む。

 

ー「田舎暮らしの良さと大変さについて。町外から移り住んだ洋貴さんが思うこと。」

 

「今の暮らしは、コンビニや自販機があるわけではないけれど、それが生活の中で必要かといわれると必要ではない。

そして、夜は暗くて、静かなもので、場所によってはそういうことがお金をださないと確保できないこともあるけれど

ここにはそれがあります。

田舎は都会のようにできないことは往々にあるけれど、むしろその不便が楽しめる人にとってはありだと思う。

リモートワークが浸透しつつある世の中になってきていることも、地方に住めるメリットになっています。」

 

そして、洋貴さんは、地元の消防団に入団している。

 

「消防団の活動は、田舎だと団員数が少ないのでなかなか大変です。操法大会の要員も今年で2回目を頼まれました。

今後もますます活動人数が限られてくると思うので、

災害現場での実践的な知識を主に学ぶ場にするなどの配慮が必要になってくるかもしれません。」と洋貴さん。

 

田舎に暮らすということは、その人、そして夫婦にとって、メリットにもデメリットにも感じることもある。

そのあたりの課題を、時代に合わせた新しいカタチとして見直し、移行させていくことも今後必要になってくるだろう。

 

ご主人の洋貴さんは、この日は途中で地区のお祭りの準備に、先にひとりで出かけていった。

家族に、しきたりなどを教わりながら、積極的に町の行事に参加している洋貴さんの姿に感心した。

 

雪の日。お庭にでる恵さん。(洋貴さん撮影)

 

雪が積もった日は、ユニークな雪像を。(洋貴さん作)

 

 

週末になると、恵さん夫妻のご自宅前ではご家族みんなで仲睦まじく、お庭づくりをする姿を見かける。

なんとも微笑ましい光景である。

 

恵さん夫妻のお庭には、バラなどの可愛らしいお花や沢山の球根、カラーリーフなどが植えてあり

新しく開拓した場所の山では、椎茸の原木が丁寧に積まれている。

森の中を散策すると、きらきら光る水晶もとれる。

恵さんが子どもの頃から採れるという水晶

 

そして、お隣のご実家では、ご両親や祖父母が手入れされる和風のお庭が広がり

赤い実のなる木や可愛らしいリンドウが咲き、季節になると大きなカヤの木がたくさんの実をつける。

 

ご実家との間にそびえ立つカヤの大木。町民の人にお裾分けした実は、カヤの実クッキーに。

 

 

この自然の中で、実家とほどよい場所に家を建て、共通のお庭づくりを楽しんだり、家族全員で山歩きをしたり

伝統を享受しながら、理解し、譲り受けていく、纐纈一家の仲睦まじい暮らし。

 

恵さんが、家のこと、暮らしのことを考え

洋貴さんが地域のことに関わりながら真面目に向き合っているご夫妻の姿。

そして、祖父母やご両親に、大きな安心感を与えているご夫妻の存在。

 

恵さん夫妻が選んだ暮らしのカタチは、とても真面目で温かい。

 

ご実家の広い敷地の前での「家族写真」

 

(令和4年5月 インタビュー/平井はな恵)

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